コンクリート構造物の接合面において、鉄筋を後から定着させる技術全般を広義に「あと施工鉄筋」と呼びますが、その中でも構造耐力を負担させる目的で施工されるものが「植筋(植筋工法)」です。これに対し、コンクリート打設時の継ぎ手やブロック積みの倒壊防止など、応力伝達を主目的としないものを「差筋(さしきん)」と呼び、両者は設計思想の根幹から明確に区別されています。
差筋は、既設コンクリートにドリルで小径の穴を開けて鉄筋を直接打ち込む、あるいは生コン打設時にあらかじめ鉄筋を差し込んでおく簡易的な手法です。一方、植筋工法は既設コンクリート躯体に計算された径・深さで削孔を行い、エポキシ樹脂注入やビニルエステル系カプセルなどの接着系アンカー(ケミカルアンカー)を充填した上で異形鉄筋を定着させます。これにより、コンクリートと鉄筋の間に化学的な付着力を形成し、母材コンクリートと同等以上の引抜耐力を発現させます。
建築基準法第37条(建築材料の品質)および国土交通省告示、日本建築学会の『各種アンカーボルト設計施工指針・同解説』において、構造耐力上主要な部分への緊結には厳格な品質証明と構造計算が義務付けられています。非構造部材に用いられる差筋を耐震補強や梁・柱の増設に流用することは、明らかな構造欠陥および基準法違反に繋がるため、現場監督および設計監理者はその境界線を厳密に管理しなければなりません。