狂四郎の代名詞といえば、刀の切先で宙に円を描く「円月殺法」である。相手を術中に引き込み、幻惑させた刹那に一閃する必殺の太刀。この唯一無二の太刀筋を映像化するにあたり、現場では徹底的なこだわりが貫かれていた。
舞台となった東映京都撮影所では、照明技師とカメラマンが狂四郎の刃が描く軌跡をいかに妖しく浮かび上がらせるかに心血を注いだ。銀箔をあしらった刀身に照明をピンポイントで反射させ、スモークが立ち込めるスタジオ内でスローモーションを交えて撮影する手法は、職人技の極致といえる。田村正和は自らの手首の返し、刃の角度、さらには視線の流し方に至るまでミリ単位の修正を重ねた。激しい立ち回りではなく、静寂のなかで間合いを詰める独特の剣戟アクションは、京都の伝統と田村のストイックな身体表現が融合した奇跡の産物だった。