トマトに砂糖をかけると、単に甘くなるだけでなく「酸味が消えてフルーティーに感じられる」現象には、明確な味覚生理学の裏付けがあります。
トマトには有機酸であるクエン酸やリンゴ酸が豊富に含まれており、これが爽快感とともにシャープな酸味をもたらします。ここにショ糖(砂糖)が加わることで、舌の味蕾(みらい)において酸味の刺激を抑制する「味覚の抑制(相殺)効果」が働きます。酸味の角が取れると同時に、トマト自体が持つアミノ酸の一種であるグルタミン酸(旨味成分)の輪郭が際立ち、全体として濃厚で奥行きのある味わいへと再構築されます。
特に効果を発揮するのが、少し早摘みされた酸味の強いトマトや、中心部がまだ硬いトマトです。浸透圧の作用によってトマトの表面から余分な水分が引き出され、砂糖が溶けてシロップ状の膜を形成することで、果肉の瑞々しさとシロップの甘みが一体化し、上質なコンポートやジュレのような食感を生み出します。