食事制限で最も多くの受診者が誤解しているのが、「水分補給」と「嗜好品」の境界線です。
まず、水分補給自体は推奨されます。過度に水分を我慢すると血管内が脱水状態に陥り、血液が濃縮されてヘマトクリット値や赤血球数、尿酸値が見かけ上高くなる「濃縮効果」が発生します。また、血管が収縮して採血時の穿刺が難しくなり、神経損傷や内出血のリスクを高める要因にもなります。ただし、口にしてよいのは「水(白湯)」または「無糖の麦茶」に限られます。
ネット上で頻繁に議論される「ブラックコーヒーなら無糖だから飲んでも平気か」という疑問に対する臨床の解答は、明確に「NG」です。コーヒーに含まれる高濃度のカフェインは交感神経を興奮させ、アドレナリンやコルチゾールの分泌を促進します。これにより肝臓からの糖放出が促され、糖分を含んでいなくとも血糖値が上昇します。さらに、カフェインには胃液分泌を刺激する強力な作用があるため、胃部X線(バリウム)や上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査を併用する場合、胃粘膜に胃液が滞留して観察を著しく阻害します。
同様の落とし穴が「ガム」や「飴」です。ノンシュガーやキシリトール配合のガムであっても、咀嚼運動と味覚刺激によって脳が「食事開始」と認識し、インスリンや消化酵素の分泌スイッチが作動します。糖質入りの飴を1粒舐める行為に至っては、糖分が舌下および胃粘膜から急速吸収され、空腹時血糖の測定を完全に破綻させます。