古くから民間伝承やネット上で囁かれるつむじ2個にまつわる噂の中で、最も代表的なものが「天才説」と「将来ハゲる説」です。しかし、皮膚科学や毛髪医学の観点から見ると、これらはいずれも科学的根拠のない俗説に過ぎません。
まず「ハゲる」という噂ですが、男性型脱毛症(AGA)などの薄毛は、男性ホルモン(DHT)や遺伝的レセプターの感度、頭皮の血行不良などが複合的に絡み合って生じる現象です。毛流の起点であるつむじが頭部にいくつ存在するかという形状的要因が、毛根の寿命や脱毛シグナルに直接影響を与えることはありません。つむじが2つあると毛流れの反発によって地肌が見えやすくなり、「薄毛のように見えてしまう錯覚」が噂の発端と考えられます。
一方で、つむじが2個ある人は天才という説や性格に関する迷信も各地に残っています。日本の一部の地域では、2つのつむじを持つ人を「鳥毛(とりげ)」や「ふたつむじ」と呼び、「きかん坊」「わんぱく」「物事に執着して大成する人」の象徴として語り継いできました。「鳥毛」の由来は、鳥の羽毛のように毛先が複雑に逆立つ様子から来ており、強い自己主張や独立心を持つ人物像と重ね合わされた背景があります。
また、つむじが2個ある偉人や有名人として、元メジャーリーガーのイチロー氏や芸術家などの名が挙げられることが多く、彼らの圧倒的な集中力や独創的なパフォーマンスが「天才の証」というイメージを強固なものにしました。医学的な因果関係はないものの、人とは違う稀少な個性としてポジティブに捉えられてきた歴史が伺えます。