兵庫県立美術館を訪れて最も圧倒されるのは、展示室の外に広がる重層的な建築空間そのものです。安藤忠雄氏は「美術を見るだけでなく、建物の中を散策し、海や山を感じる体験そのものがアートである」という思想のもと、あえて明快な直線通路を排除し、階段やスロープ、渡り廊下が複雑に交差する迷宮のような回遊動線を設計しました。
その象徴とも言えるのが、地下1階から屋外デッキへとダイナミックに吹き抜ける「円形テラス」です。見上げるとコンクリートの円形スパイラル階段が青空を切り取り、光と影の陰影が時間とともに表情を変えていきます。建築写真の愛好家やSNS世代にとって、絶好の撮影スポットとして不動の人気を誇っています。
さらに見逃せないのが、2019年に新設された第2展示棟内にある『Ando Gallery(安藤忠雄コーナー)』です。安藤氏自らの寄贈によって開設されたこのギャラリーは、なんと入場無料で公開されています。代表作である「光の教会」や「住吉の長屋」をはじめ、国内外の大規模建築プロジェクトの精巧な木製模型、直筆ドローイング、初期のスケッチ群が惜しげもなく並び、建築を志す人々やデザイン愛好家にとって必見の聖地となっています。
屋外テラスや海のデッキには、思わず足を止めてしまうアイコニックな現代アートが点在しています。
- 青いリンゴ オブジェ(Youth):海のデッキに設置された巨大な青い林檎の彫刻。アメリカの詩人サミュエル・ウルマンの詩「青春」にインスパイアされた安藤忠雄氏のデザインによるもので、「挑戦心を失わず、瑞々しい感性を保ち続ける」というメッセージが込められています。
- 美かえる(Kaelu):美術館の屋上に鎮座する、オランダの芸術家フロレンタイン・ホフマン氏による巨大なカエルのオブジェ。「無事にかえる」「街が復興して元にかえる」といった祈りとユーモアが込められています。
- Sun Sister(なぎさちゃん):海沿いの「なぎさ公園」側に凛と立つ、ヤノベケンジ氏による巨大彫刻。手にした輝く太陽と力強い立ち姿が、未来への希望を象徴しています。