いまなおインターネット上の一部で「多摩川の堤防が決壊して武蔵小杉が水没した」という誤認が見受けられますが、これは完全な事実誤認です。当時の武蔵小杉で発生した事象の本質は、堤防を水が越える「外水氾濫」ではなく、下水管を通じて水が市街地に逆流する「内水氾濫(ないすいはんらん)」でした。
当時の被害経緯を整理すると、以下の連鎖によって被害が拡大しました。
- 記録的な豪雨により多摩川の水位が急激に上昇。
- 街の雨水を多摩川へ自然放流するための「排水樋管(下水ゲート)」が開いたままだったため、増水した多摩川の水が下水道本管を逆流。
- 排水口やマンホールから濁流が吹き出し、駅周辺の低地部へ水が溢れ出す「バックウォーター現象」が発生。
- 溢れた泥水が、一部タワーマンションの地下駐車場や機械室へ流れ込み、受変電設備が水没して長期間の停電・断水を引き起こした。
当時の報道特別番組や住民の手記には、「停電によってエレベーターが全停止し、40階を超える自宅まで毎日非常階段を往復せざるを得なかった」「仮設トイレの行列に並びながら、なぜ堤防が決壊していないのに水浸しになったのか理解できなかった」という悲痛な声が記録されています。この構造的欠陥が白日のもとに晒されたからこそ、行政と管理組合の双方が「逆流の阻止」と「電気設備の自衛」という明確な標的を絞り込んだ対策を打つことが可能になりました。