個別のマンションの自衛にとどまらず、行政側のインフラ再編も大幅に進展しました。川崎市は台風19号の教訓を受け、多摩川沿いの排水体制を根底から見直しています。
川崎市建設緑政局が進めた対策の柱は以下の3点です。
- 排水樋管ゲートの運用改善と遠隔操作化:従来は現地作業員の手動操作に依存していたゲートを完全自動・遠隔操作化。多摩川の水位が上昇した瞬間に確実に閉鎖し、市街地への逆流をミリ単位で遮断するシステムを構築。
- 逆流防止フラップゲートの増設:山王排水樋管をはじめとする主要箇所に、川側からの水圧で自然に閉じるフラップゲートを新設。人為的判断の遅れによる逆流リスクを構造的に排除。
- 大型雨水貯留管および排水ポンプ車の増強:樋管を閉鎖した際、市街地に降った雨水を地下深くに一時貯留する巨大な地下貯留管を整備。内水氾濫の許容量を飛躍的に拡大。
また、中原区内のタワーマンション群においても、行政任せにしない自衛策が標準仕様となりました。地下通気口やドライエリアには、水圧に耐えうる船舶基準の水密ハッチが設置され、1階エントランス周りには集中豪雨時に自動でせり上がる防潮板(電動防水壁)が導入されています。2026年改訂版の川崎市ハザードマップでは、これらの抜本的対策が反映され、浸水継続時間や想定浸水深のシミュレーション精度が大幅に向上しています。