日本国内に約3,000カ所存在する温泉地の中でも、環境省が定める療養泉基準において「含よう素泉」と正式に分類される温泉は、全体のわずか1%未満に過ぎません。2014年(平成26年)の「鉱泉分析法指針」改訂によって独立した泉質名として認められて以降、その希少性と鮮明な個性に魅せられる湯巡りファンが急増しています。
公的基準において「含よう素泉」と名乗るためには、温泉水1kg中にヨウ素イオン(I-)が10mg以上含まれていなければなりません。その多くは含よう素ナトリウム塩化物泉という泉質を形成しており、太古の海水が地中に閉じ込められて熟成された「化石海水」が起源とされています。化石海水由来の温泉は極めて濃厚な塩分を含み、そこに海藻類などの有機物が悠久の時をかけて分解・濃縮されることで、世界的にも珍しい高濃度ヨウ素泉が誕生するのです。
日本は世界第2位のヨウ素産出国であり、その約8割を千葉県の南関東ガス田エリアが占めています。天然ガスとともに汲み上げられるかん水(地下水)に莫大なヨウ素が含まれている地質的背景こそが、房総半島をはじめとする関東平野部で個性豊かな名湯が湧き出る決定的な理由です。