絶賛の声が並ぶ一方で、実際に現地に泊まり込んで初めて見えてくるリアルな側面にも触れておかなければならない。まず知っておくべきは、館内が段差や階段を活かした傾斜地の立体構造になっている点だ。スロープカーなどの移動設備は整っているものの、バリアフリーを最優先事項とするシニア層の滞在には、事前に移動導線の確認が欠かせない。
また、自家源泉の泉質はアルカリ性単純温泉で、肌触りが非常に滑らかで「美肌の湯」と称されるが、湯温の管理には客室ごとの微細な調整が必要になる場合がある。大浴場で手足を伸ばして何十人もの宿泊客と空間を共有する「古き良き巨大旅館」の風情を求める人にとっては、プライベートに寄り添いすぎたこの空間設計は、やや静かすぎてストイックに映るかもしれない。ここは仲間と賑やかに騒ぐ場所ではなく、自分自身や大切なパートナーと静かに向き合い、深呼吸するためのサンクチュアリなのだ。