音楽家としての父がオーケストラ全体に命を吹き込むタクトを振ったのに対し、息子が選んだのは言葉と肉体を使って人間を演じる役者の道だった。一見すると異なる表現領域だが、両者の根底に流れるものは驚くほど共通している。舞台やカメラの前で一瞬の空気を読み、他者と協奏しながら感情を爆発させる――その直感的なテンポ感は、幼い頃から家の中に響いていた音楽の波動と無縁ではない。
父・征爾は生前、息子の出演作を密かにチェックし、時に厳しく、時に熱く感想を伝えていたという。ジャンルは違えど、表現に対する狂気とも言える情熱を共有していた二人の関係は、親子であり、表現者同士のライバルでもあった。