2000年代後半、水嶋ヒロといえばテレビで見ない日がないほどの主役級スターでした。そんな彼が2010年秋に大手芸能事務所・研音を退社した際、世間には「事務所に干された」「芸能界を追放された」といった過激な憶測が飛び交いました。しかし、一次資料や当時の会見記録を振り返ると、その内情はまったく異なる主体的かつ戦略的な決断であったことがわかります。
最大の転機となったのは、結婚直前に判明した絢香のバセドウ病(甲状腺機能亢進症)でした。過密スケジュールの中で体調を崩す妻の療養を支えるため、拘束時間が極めて長い連続ドラマや映画の現場から離れる必要があったのです。当時のインタビューでも、水嶋は「自分の人生で何が一番大切かを考えたとき、迷わず家族を守る選択をした」と述懐しています。
さらに、幼少期をスイスで過ごした帰国子女であり、慶應義塾大学環境情報学部を卒業した水嶋には、単なる「演者」にとどまらないクリエイティブな表現欲求がありました。2010年には本名の齋藤智裕名義で執筆した小説『KAGEROU』が第5回ポプラ社小説大賞を受賞し、累計発行部数100万部を超えるベストセラーを記録。これを契機に、彼は「会社経営」「ブランドプロデュース」「エンジェル投資」といった実業の世界へと活動の場を本格的にシフトしていきました。
現在、水嶋ヒロの肩書は多岐にわたります。絢香の音楽活動と著作権をマネジメントする「株式会社A stAtion」の共同経営をはじめ、自ら立ち上げたライフスタイルブランドの企画、さらには株式会社Be YouthfulでCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)を務め、約2年間の開発期間を経てローンチしたオールインワンシャンプー「JUDROP」のプロデュースなど、着実にビジネス界で実績を残しています。