読者から最も多く寄せられる疑問の一つが「噛まれたり触ったりしたときの危険性」です。まず結論から述べると、ヤモリに毒はあるかという問いに対しては「完全に無毒」と断言できます。日本国内に生息するニホンヤモリをはじめ、世界中のヤモリ科において毒液を分泌する種は確認されていません。威嚇時に口を開けて噛み付いてくることがありますが、歯が極めて小さいため出血することは稀で、傷口を消毒する程度で問題ありません。
警戒が必要なのは、日本の固有種であるアカハライモリです。研究機関の毒性分析により、アカハライモリの毒性の主成分はフグ毒と同じ猛毒「テトロドトキシン」であることが証明されています。成体1匹が保持する毒量は約数ミリグラムに達し、小型の鳥類や哺乳類であれば死に至らしめるほどの威力を秘めています。
では、なぜこれほど強烈な毒を持つのでしょうか。その答えは、イモリのお腹が赤い理由と直結しています。自然界において赤と黒のコントラストは「警告色(アポセマティズム)」として機能します。外敵に襲われた際、イモリは身体を反らせて腹部の鮮血のような赤色を見せつけ、「自分を食べると命を落とす」というシグナルを捕食者に送る適応進化を遂げたのです。
イモリを素手で触っただけで直ちに皮膚炎を起こすことは少ないものの、皮膚から分泌される粘液が目や口などの粘膜に入ると、激しい痛みや麻痺症状を引き起こす危険性があります。野外で見つけて観察する際は、触れた手で目をこすらないこと、触覚後は流水と石鹸で徹底的に手洗いを行うことを鉄則としてください。