「支那人」という言葉の語源や歴史的変遷、現代における国際的背景を徹底解説する試みは、近年の人文学界でも大きな進展を見せている。学術出版の世界では、単なるタブー視を脱し、言説分析や社会言語学の手法を用いて呼称問題の構造を再解釈する研究が相次ぐ。東アジア史の枠組みの中で、言葉が共同体の境界線をどのように引き直してきたのかが精密に分析されているのだ。
国立公文書館の収蔵資料を活用した最新の論文群は、戦前の日本国内でも呼称をめぐる激しい議論が存在した事実を掘り起こしている。知識人や外交官の間ですら、相手国の主権を尊重すべきとする立場と、慣習を優先する立場の対立があった。言葉の歴史を知ることは、当時の社会が孕んでいた多様な葛藤を複眼的に捉え直す作業に他ならない。