セントラルキッチンによる効率化やロボット調理の導入など、外食産業全体が合理化の波に洗われている。原材料費やエネルギーコストの高騰が続く厳しい逆風の中、仕込みから焼き上げまでを愚直な手作業で行う個人の洋食店は年々姿を消しつつある。だが、日本洋食協会をはじめとする専門家たちが口を揃えるのは、こうした独立独歩の店こそが日本の洋食文化の防波堤であるという事実だ。
日本人が明治以降、独自の感性と技術でローカライズし発展させてきた「洋食」という奇跡の食ジャンル。それは、大量生産では決して再現できない「火加減の呼吸」や「ソースの煮詰まり具合を見極める勘」の中に息づいている。どれほど時代が移ろおうとも、本物を求める舌を持つ客がいる限り、この灯が消えることはない。