視線を海の外へ転じると、この問題の根源には宗教的熱狂が横たわっている。19世紀アメリカ、ジョセフ・スミス・ジュニアが創始したモルモン運動において、複婚は「永遠の神聖な義務」として導入された。天国での至高の栄光を得るための神聖な戒律という建前は、共同体の中で急速に権力維持の道具へと変質していった歴史がある。
主流派教会がやがてアメリカ合衆国法に従って複婚を放棄した後も、その原理主義的な解釈に固執した分派が荒野へと逃亡した。聖典の都合の良い解釈は、指導者が自らの欲望を神意として正当化する格好の隠れ蓑となったのだ。歴史が証明しているのは、信仰の名のもとに複数の配偶者を持つシステムが、常に女性や子どもの人権を犠牲にして成り立ってきたという冷厳な事実である。