柳家わさびを語るうえで欠かせないのが、師匠である柳家さん喬の存在だ。端正で情理に厚い古典を極めた大師匠のもとで、徹底的な基礎と礼作法を叩き込まれた。一般社団法人落語協会の重鎮であるさん喬門下という出自は、わさびの芸に強固なバックボーンを与えている。
一方で、一門の兄弟子には当代きっての人気者・柳家喬太郎がいる。喬太郎が切り拓いた「新作と古典のハイブリッドな爆発力」を間近で浴びて育ったことが、わさびの創作意欲に火をつけたことは想像に難くない。正統派の美しい所作を身につけながら、頭の中では破天荒なシチュエーションを構築する。この二面性こそが、彼の落語を単なるイロモノに終わらせない決定的な理由だ。