お笑い事務所の最大手である吉本興業に所属する現役芸人が、本格的な文学作品を発表して最高の誉れを手にする。当時の日本社会に与えたインパクトは絶大だった。文藝春秋から刊行された単行本は破竹の勢いでミリオンセラーを達成し、文学界の歴史にその名を深く刻み込んだ。
「お笑い芸人が書いた本」という色眼鏡は、ページをめくった瞬間に霧散する。繊細な言語感覚と、太宰治をはじめとする先人を愛読してきた著者のバックボーンが結実し、正統派の純文学として高く評価された。選考委員たちを唸らせたのは、言葉の端々から漂う人間観察の鋭さに他ならない。