物語の主役は、なんと犬だ。しかも、神の威厳を誇るはずの死神が、つややかな毛並みを持つゴールデンレトリバーの肉体に閉じ込められてしまうところから話は始まる。彼のコードネームはレオ。舞台となるのは、築年数の経過したホスピス施設「丘の上病院」だ。死を間近に控えた患者たちが集うこの場所で、死神レオは人間の「未練」が発する独特の臭いを嗅ぎ取っていく。
知念実希人が描くこの物語は、単なるハートフルドラマにとどまらない。死神という非日常の存在が、医師としての知識に基づく病棟の現実と交差する瞬間、一風変わった医療ミステリー・ファンタジーとしての真価を発揮する。高慢な態度を取りつつも、次第に人間の健気さや切なさに絆されていく死神レオの愛くるしい言動が、読者を一気に物語の世界へと引きずり込んでいく。