宇多田ヒカルは現在、長年暮らすロンドンの邸宅で、2015年に誕生した愛息(息子)と2人暮らしを続けています。イギリスという地を選んだ背景には、過剰なパパラッチから子供のプライバシーを保護し、日本とは異なる多文化社会の中で自然体の「一市民」として育てたいという強い母心が働いています。
彼女は日頃から、息子に対して日本のカルチャーや言語教育を怠らない一方で、英国の先進的な教育環境を与えています。SNSでは「息子の作った奇想天外な工作」や「日常の微笑ましいやり取り」をユーモアたっぷりに報告することがあり、一人の母親として子供と真摯に向き合う温かな日常が垣間見えます。
そして彼女の生き方を語る上で決定打となったのが、2021年6月のノンバイナリー(Non-binary)の公表です。インスタライブの配信中、彼女は以下のようなニュアンスで全世界に向けて語りかけました。
「日常的に『Miss(未婚女性)』『Mrs(既婚女性)』『Ms(女性)』と呼ばれることにずっと違和感があった。自分のジェンダーや婚姻状況を定義されることにうんざりしていた。私は『Mx(ノンバイナリー向けの敬称)』がもっと広まることを願っている」
この告白は、単なるセクシャリティの開示にとどまらず、彼女がこれまでの人生で課せられてきた「誰かの妻」「良妻賢母」といった家父長制的なレッテルからの精神的解放を意味していました。2度の結婚と離婚を経て、彼女は「男と女」「夫と妻」という二元論的な枠組みそのものを脱ぎ捨て、よりフラットで自由な人間としての自己を確立したのです。