華やかなスポットライトの裏側で、昭和歌謡の黄金期には凄まじいドラマが渦巻いていた。生中継でのサプライズ対面や海外からの衛星生中継など、当時としては無謀とも思える演出が毎週のように試みられていた。芳村はその中心で、ディレクターの意図を汲み取りつつ、アーティストの尊厳を守る防波堤の役割も果たしていた。
ある時は感極まって歌えなくなった若手歌手の背中にそっと手を添え、またある時は突発的な機材トラブルを機転の利いたトークで繋ぎ止めた。現場のスタッフやアーティストからの絶大な信頼があったからこそ、あのような奇跡的な瞬間が幾度もブラウン管越しに届けられたのである。彼女の存在なくして、あの時代の歌謡曲ブームがこれほど熱狂的なカルチャーとして結実することはなかっただろう。