演劇界は、過去にピッチでどれほどの歓声を浴びていたとしても、一本の芝居やセリフ一つで評価が決まる厳しい世界だ。芝居を始めた当初、プロの世界で培った「プライド」が邪魔をすることもあったという。しかし、彼はそのプライドを真っ先に捨て去った。
オーディションでは過去の経歴を押し出すことなく、他の若手役者と同じように原稿を握り締め、演出家の厳しい声に耳を傾けた。発声の基礎、感情の発露、身体を使った空間表現。かつて毎日のようにボールを蹴っていた時間は、そのまま台本を読み込み、役柄の心理を解剖する時間へと取って代わられた。