人によって見える色が違うのはなぜ?ドレスの真相と脳の補正を徹底解明とはどのようなものなのか? 専門的な分析を整理してお届けします。

では、病気でも性格でもないとすれば、個人差を生み出す生物学的・環境的な要因は何なのでしょうか。最新の研究では、網膜にある「錐体細胞(すいたいさいぼう)」の微細な差異と、個人の「概日リズム(生活習慣)」が大きく関与していることが突き止められています。

網膜には、光の波長をキャッチする3種類の錐体細胞が存在します。

  • L錐体:長波長(赤色付近)を感知する
  • M錐体:中波長(緑色付近)を感知する
  • S錐体:短波長(青色付近)を感知する

これらの細胞の配置バランスや感度には遺伝的な個人差があり、同じ光を見ても網膜が脳に送る一次データにわずかな強弱が生じます。さらに、加齢に伴って眼球の水晶体が徐々に黄色く濁る(水晶体の黄変)ため、年齢が上がるほど青い光がカットされ、暖色系の知覚が強まる傾向があります。

加えて興味深いのが、ニューヨーク大学の神経科学者パスカル・ウォリッシュ准教授らの研究チームが発表した「体内時計と日光暴露」に関する分析です。研究によると、「早寝早起きで日中の自然光(短波長を含む白い太陽光)を多く浴びて生活している朝型の人」は白金に見えやすく、「夜更かしが多く、人工照明(黄色みがかった暖色光)の下で過ごす時間が長い夜型の人」は青黒に見えやすいという統計的相関が確認されています。

日頃どんな光源の下で世界を見ているかという「脳の経験値」の蓄積が、曖昧な画像に出会った際の自動補正のパラメーターを決定づけているのです。