本作を語る上で絶対に外せないのが、映画史に残るレベルで作り込まれた音響デザインだ。静寂そのものが雄弁に物語を語りかける独特の設計は、極上のサスペンスと深い没入感を生み出している。
静まり返った部屋に響く時計の針の音。雨粒が傘を叩く微かな振動。そして、感情の昂ぶりに合わせて重厚に鳴り響くジャズオーケストラ。音の引き算と足し算が見事なまでにコントロールされており、観客はまるで自分がその暗がりの中に佇んでいるかのような錯覚を覚える。サントラ盤がストリーミングチャートで異例の首位を獲得したことも、サウンドの持つ圧倒的な力を証明している。