物語を牽引したのは、名取ちなみを演じた安田成美と、鴨居透を演じた緒形直人だ。快活でありながらどこか影を背負ったヒロイン・ちなみと、誠実さゆえに優柔不断な迷路へと迷い込んでいく透。二人が見せる感情の揺らぎは、観る者の倫理観を試すかのようなスリルに満ちていた。
透に一途な想いを寄せる佐倉杏子役の菊池桃子が見せた切ない熱演も見逃せない。清純派アイドルのイメージを脱ぎ捨て、愛に執着する女性の業を体現した彼女の存在が、三角関係の緊迫感を極限まで高めた。
あれから長い歳月を経て、主要キャスト陣は日本を代表する実力派表現者として円熟の時を迎えている。安田成美は凛とした佇まいで映画や舞台に深みを与え続け、緒形直人は重厚な人間ドラマに欠かせぬ名優として確固たる地位を築いた。菊池桃子もまた女優・教育者として多角的に活躍している。彼らがキャリアの初期に見せた危ういまでの煌めきは、このフィルムの中に永遠に刻まれている。