駅から歩いて数分の場所に広がるのが、日本有数の飲食店街として知られる野毛町だ。提灯の明かりが灯る夕暮れ時になると、どこからともなく仕事帰りの会社員や酒好きの若者が集まり始め、街全体が巨大な宴会場のような熱気に包まれる。焼き鳥の香ばしい煙とグラスがぶつかる音が、宵の口の街に心地よく響き渡る。
この地で何十年も受け継がれてきた大衆酒場文化の神髄は、客同士、そして店主との距離感の近さにある。狭いカウンターで肩を寄せ合い、見知らぬ隣人と一杯の酒を交わす。デジタルなコミュニケーションに慣れきった現代人にとって、こうした泥臭くも温かい人間の触れ合いこそが、何よりの贅沢と感じられるのかもしれない。