館内に入ると、まず目を奪われるのが今や絶滅危惧種となった職人による手書きの映画看板だ。ペンキの匂いと独特のグラデーション、大胆なフォントで描かれた作品タイトルは、見る者を一瞬で過去の熱狂へと連れ戻す。デジタル出力のポスターにはない、肉筆ゆえの圧倒的な力強さがそこにはある。
客席の木製シートに腰を下ろすと、長い年月をかけて多くの観客の体重を受け止めてきた軋みと歪みが体に伝わってくる。エアコンの機械音、少しカビの混じった独特の空気、そしてスクリーンを照らす映写機からの光の束。五感すべてで映画を体験するクラシカルな空間構造が、手つかずのまま保持されている。