日本の皇室には姓(名字)が存在せず、男性皇族の名には伝統的に「仁(ひと)」、女性皇族の名には「子(こ)」の文字が付けられます。昭和天皇の本名である諱(いみな)は「裕仁」、読み方は「ひろひと」です。幼少期には「迪宮(みちのみや)」という御称号で呼ばれていました。
この「裕仁」という名は、1901年(明治34年)4月29日の誕生時、祖父である明治天皇によって名付けられました。典拠となったのは中国の儒教経典『書経(尚書)』の「裕民足食(民を裕[ゆた]かにし、食を足らせる)」や『周礼』の一節です。「裕」という文字には「ゆったりとして心が広い」「寛容で豊かである」という意味があり、「仁」は他者への思いやりや最高の徳目を表します。
明治という国家近代化の過渡期において、将来の君主に対し「民の暮らしを豊かにし、寛容で慈悲深い徳をもって国を治めてほしい」という強い願いが込められていたことが、当時の宮内省記録からも確認できます。