彼の真骨頂は、一見すると政治とは無縁に思える領域から政治思想史を再構築する点にある。とりわけ鉄道史に対する造詣の深さは、単なる趣味の領域をはるかに凌駕している。線路の敷設、駅舎の構造、あるいは皇族が移動する「お召列車」の軌跡――それらはすべて、国家が国民を統合し、空間を規律化していく権力の作法そのものであった。近代化のプロセスで日本人がどのように空間と時間を身体化してきたのか。鉄道という日常のインフラを通じて近代国家の無意識を鮮やかに描き出す手法は、他に類を見ない。
政治学者・原武史が解き明かす皇室と日本政治思想の深層と課題