中国の食文化において、箸は幾重ものドラマを描き出す小道具として映像作品に登場してきた。
名作映画『ラストエンペラー』では、紫禁城の豪奢な食卓で毒見のために銀製の箸が使われる場面が描かれ、権力と孤独の象徴として印象を残した。銀は毒物に触れると変色すると信じられていたため、宮廷儀礼の不可欠な道具だった。
中国の豊かな食の情景を世界に知らしめた食文化ドキュメンタリーの金字塔『舌で味わう中国』(A Bite of China)では、地方の竹林で職人が竹を切り出し、一本一本手作業で箸を削り出すプロセスが情緒豊かに映し出されている。家族が集う旧正月の食卓で交わされる箸のぬくもりは、Netflixなどの国際的な配信網を通じて世界中の視聴者の心を掴んだ。
動画共有サイトのbilibiliでは、若いクリエイターたちによる箸の歴史考察や宮廷料理の再現動画が数百万回単位で再生されている。古文書の記述をもとに歴代王朝の箸の材質や長さを検証するコンテンツが人気を博すなど、デジタルネイティブ世代による伝統文化の再解釈が熱狂を生んでいる。