欧州の主要競馬場といえば、エプソムの激しいアップダウンやアスコットのタフな急坂など、ダイナミックな高低差が代名詞です。しかし、ヨーク競馬場は全体の高低差がわずか約2メートル強と極めてフラットなレイアウトを有しています。形状は大きな洋梨のような左回りの周回コースで、コーナーの半径が非常に緩やかであるため、馬群の外を回っても極端な遠心力のロスを受けにくいという特徴があります。
一見すると「日本のようなスピード競馬に適したコース」に見えますが、ここに最大の落とし穴が存在します。ヨークの真の難所は、最終コーナーを抜けてからゴール板まで続く約900メートル(約4.5ハロン)に及ぶ長大な直線です。これは欧州の周回コースとしては最長クラスであり、東京競馬場の直線(約525.9m)をはるかに凌駕します。どれほど平坦であっても、約900mもの間トップスピードを維持し続けることは物理的に不可能です。早めにスパートをかけた先行馬が残り200mで完全に脚を失うシーンが頻発し、騎手には緻密なペース配分と仕掛けの我慢が極限まで求められます。