生成AIの本格普及や消費者行動の激変に直面する2026年、国内外のトップ企業が経営戦略の軸に据えているのがまさにこの不易流行です。歴史を重ねながら成長を続ける企業は、「守るべきミッション」と「変えるべき事業手段」を冷徹に切り分けています。
1. 株式会社 虎屋(とらや)|「おいしい和菓子を喜んでいただく」ための徹底した自己変革
室町時代後期創業、約500年の歴史を誇る老舗和菓子店「とらや」は、不易流行を体現する代表格です。同社の不易(経営理念)は「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂くこと」。この極めてシンプルな本質を死守するため、手段としての事業(流行)は時代ごとに大胆な変化を遂げています。
1980年のパリ出店に始まり、近年では「TORAYA AN STAND」の展開による若年層向けカフェ業態の確立、さらにはグローバル市場を見据えたヴィーガン対応菓子の開発など、伝統にあぐらをかかない挑戦を継続しています。公式インタビュー等で歴代当主が語る「伝統とは革新の連続である」という姿勢は、芭蕉の教えそのものです。
2. 任天堂株式会社|「娯楽を通じた笑顔の創出」とプロダクトの完全転換
1889年に京都で花札製造からスタートした任天堂。同社が掲げる不易のコアは「独創的な娯楽の創造を通じて、世界中の人々を笑顔にする」ことです。
花札からトランプ、玩具、そして家庭用ゲーム機(ファミリーコンピュータ、Nintendo Switchなど)へ、さらに近年ではテーマパーク事業や映画などのIP映像展開へと、提供するプラットフォームや技術(流行)は驚異的な柔軟性で姿を変えています。ハードウェアの仕様やビジネスモデルが激変しても、任天堂らしさ(不易)が一切揺らがない理由は、理念と手段が完全に分離・連動しているからです。
3. 株式会社 ファーストリテイリング(ユニクロ)|「LifeWear」という不易とAIサプライチェーンの流行
「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」というコーポレートステートメントのもと、ユニクロが追求する「LifeWear(究極の日常着)」は、高品質で誰もが快適に過ごせる服を提供するという不易の信念です。
一方で、その実現手法(流行)においては、全自動倉庫の導入やAI需要予測によるサプライチェーン改革、サステナビリティに特化した服の循環型プログラム(RE.UNIQLO)など、最先端の技術潮流を猛烈なスピードで組み込んでいます。変革を止めないこと自体が、ブランドの本質を守る防壁として機能しています。