映画界の激震は豪快な大作だけにとどまらない。木下惠介監督による『二十四の瞳』は、瀬戸内海の小豆島を舞台に、軍国主義に翻弄される教師と教え子たちの歩みを描き、列島中を涙で濡らした。同年の国内映画賞では『七人の侍』や『ゴジラ』を抑えてトップの評価を獲得するなど、人々の心に深く寄り添った。
この年はまた、警察予備隊を前身とする自衛隊が正式に発足した年でもあった。平和への祈りと再軍備への懸念が交錯する社会情勢の中で、『二十四の瞳』が訴えかけた反戦のメッセージは、戦争の悲惨さを忘れまいとする庶民の切実な祈りと完璧に共鳴していた。スクリーンは、国家のあり方と個人の幸福を真摯に問い直すための対話の場だったのだ。