寺川は、古くから大和川水系の中でも水量の変動が激しく、時に暴れ川として恐れられてきた歴史を持つ。度重なる洪水によって作物が流され、尊い人命が失われるたび、流域の村々では水魔を鎮めるための祈りが捧げられてきた。その切実な願いの証として川岸や堤防の分岐点に建立されたのが、一連の地蔵尊である。
川風が冷たい。
地元に残る古文書によれば、江戸時代中期の長雨による大水害の後、村人たちが力を合わせて石像を刻み、川の氾濫を防ぐ守護神として祀ったのが始まりとされる。旅人の安全を見守る道標としての役割も兼ねており、刻まれた文字からは当時の交易や人々の往来の様子をうかがい知ることができる。荒ぶる自然に対する人間の畏怖と、水と共に生きる智恵が、小さな石像一つひとつに力強く刻み込まれているのだ。