1991年11月、日本の出版業界に未曾有の衝撃が走った。写真家・篠山紀信の手によって撮影された宮沢りえの写真集『Santa Fe』の発売である。発売元である朝日出版社には予約が殺到し、最終的な発行部数は150万部という前代未聞の数字を記録した。
書店には長蛇の列ができ、段ボール箱のまま飛ぶように売れていく光景は連日メディアを独占した。トップアイドルのヌード写真集という枠組みを軽々と超え、社会現象そのものへと昇華した瞬間だった。ニューメキシコ州サンタフェの乾いた大地、古びた扉や白い壁を背景に切り取られたのは、生々しいエロティシズムではなく、みずみずしい生命力と剥き出しの芸術性だった。