開湯から1200年以上の歴史を誇る塩原温泉郷は、温泉愛好家にとってまさに聖地と呼ぶにふさわしい。箒川沿いに点在する11の温泉地には、乳白色、エメラルドグリーン、透明、黒褐色など、泉質や効能が全く異なる多種多様な源泉が湧き出している。近年の温泉ツーリズム(旅行・レジャージャンル)において、単一の温泉地でこれほど豊かな泉質のグラデーションを体感できる場所は全国的にも極めて珍しい。
渓流のせせらぎを間近に望む露天風呂で湯守が丹精込めて守り続ける生の源泉に浸かれば、日常の疲労がじんわりと溶け出していくのを実感できる。箒川にかかる吊り橋を渡り、遊歩道を歩きながら秘湯を巡る時間は、まさに五感を研ぎ澄ます体験そのものだ。大自然の造形美と湯治文化が融合したこの場所には、観光地化されすぎていない本物の日本の原風景が残されている。