舞台は太平洋を望む高知。青い空と陽炎が揺れる街並みの中で描かれるのは、どこにでもありそうで、けれど生涯に一度しか訪れない高校生たちの日常だ。東京から転校してきた謎めいた少女・武藤里伽子と、彼女に振り回される主人公・杜崎拓、そして拓の親友である松野豊。この3人が織りなす距離感は、あまりにも不器用で、痛いほどリアルだ。
主人公・拓の声を演じた飛田展男によるナチュラルな語り口が、物語に独特の情感を与えている。派手な魔法も、世界をかけた戦いも起こらない。だが、修学旅行先のハワイで突如巻き込まれるトラブルや、ホテルの部屋で見せる里伽子の涙など、日常のふとした隙間にひそむ感情のゆらぎが見事に表現されている。単なる恋愛映画の枠に収まらない瑞々しい感性は、日本の青春アニメのひとつの到達点と言っても過言ではない。