塩を振って焼くだけ。この極めてシンプルな工程にこそ、職人たちの精緻な科学と技術が詰まっている。単なる味付けではない。塩の役割は、魚の水分を適度に抜き、余計な臭みを閉じ込めつつ、旨味成分であるイノシン酸を凝縮させることにある。
振り塩をしてから15分。表面に浮き出た汗のような水分をペーパータオルで丁寧に拭き取る。このひと手間だけで、焼き上がりの香ばしさが跳ね上がる。強火の遠火で一気に皮目を焼き固め、中の水分を逃がさない。噛んだ瞬間に弾ける皮の香ばしさと、ふっくらとした身のコントラストは、まさに職人技の結晶だ。