長年にわたり都市伝説の象徴として君臨してきた怪人のルーツを辿ると、昭和初期の急速な都市化と社会変容に行き着く。日本民俗学会に寄せられた新たな分析論文によると、1930年代の大阪や東京で突如として流行した「不審な男」の噂が原点だという。当時、路地裏で囁かれた流言飛語が口承の過程で怪奇化し、戦後の学校怪談へと滑り込んでいった。
昭和中期に入ると、その姿は「赤紙・青紙」を選択させる便所怪談へと決定的な変化を遂げる。赤を選べば血の海に沈み、青を選べば血を吸い尽くされるという逃げ場のない二択。この極限状態の心理描写こそが怪人の本質であり、戦時下の徴兵赤紙や戦後の物品不足に対する人々の無意識の恐怖が投影されていたとする説も根強い。