解説者としての名声にとどまらず、指導現場での手腕もまた異彩を放っている。象徴的なのが、東京大学運動会ア式蹴球部での挑戦だ。スポーツ推薦のない最高学府の秀才たちを率い、論理的かつ情熱的なアプローチでチームの総合力を飛躍させた実績は、指導者コミュニティに衝撃を与えた。
彼が授けたのは、感覚的な精神論ではなく、ピッチ上のポジショニング原則と数的優位を作るための具体的なメソッドだ。相手が4バックならどこに立つか。5バックで引かれたらどうライン間を突くか。一つひとつのタスクを明確化し、選手たちが自律的に判断できるフレームワークを構築した。
才能に恵まれたプロだけでなく、限られた条件下の学生であっても、戦術の規律と共通言語があれば強豪と渡り合える。東大ア式蹴球部で実践された極秘メソッドは、日本サッカーにおける「指導の再現性」という難問に対するひとつの鮮烈な解答だった。