極彩色に彩られた社殿の前に立つと、思わず息を呑む。現在の本殿は寛永十一年、徳川三代将軍・家光の手によって再建されたものだ。前殿と後殿を前後に連結させた「八幡造(はちまんづくり)」と呼ばれる極めて珍しい古代建築様式を今に伝える貴重な遺構であり、2016年には国の国宝に指定された。
目を凝らすと、建物の随所に施された精巧な彫刻が物語を紡ぎ出している。名工・左甚五郎作と伝わる「目貫きの猿」や、極彩色の欄間に舞う瑞獣たち。神仏習合時代の記憶を色濃く残す社殿の彫刻群は百五十点を超え、見る位置や光の角度によって全く異なる表情を見せる。なかでも楼門正面の扁額に掲げられた「八幡宮」の文字には、参拝者を惹きつける秘密がある。「八」の字が、神の使いである二羽の鳩が向かい合う姿で描かれているのだ。
現在、これらの貴重な意匠は文化財保護の最前線でも注目されている。国内外の研究者による調査が進む一方、Google Arts & Cultureなどのデジタルアーカイブ技術によって高精細な画像が世界へ配信され、国宝・重要文化財・神社仏閣が持つ普遍的な造形美が国境を越えて再評価されている。だが、木材の微かな香りや朱塗りの艶やかさは、やはり現地でしか味わえない。