丸山ワクチンは、結核菌の抽出物質(リポアラビノマンナンなど)を利用して生体の自然免疫を刺激し、宿主の抵抗力を高めることでがん細胞の増殖を抑えるというメカニズムを持つ。かつては「非科学的」「オカルト」と切り捨てられることもあったこのアプローチだが、近年の医薬品・医療バイオ産業の急速な進展によって、全く異なる光が当てられるようになった。
2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した免疫チェックポイント阻害薬の登場以降、がん治療の主役は「外から叩く毒」から「内なる免疫を目覚めさせる技」へとシフトした。がん免疫療法が標準治療の第四の柱として確立された今、丸山千里が半世紀以上前に提唱していた「生体防御論」は、時代を先取りしすぎていた先駆的知見だったと再評価する研究者も少なくない。
現在のバイオテクノロジーの視座から見れば、丸山ワクチンの作用機序はマクロファージや樹状細胞の活性化、コラーゲン増殖によるがん細胞の封じ込め(カプセル化)など、極めて合理的な免疫調整作用として説明がつく。単剤での劇的効果には限界があるものの、最新の分子標的薬や免疫療法との併用において、その補完的な価値を再検証する動きは水面下で続いている。