テレビ東京系の名作ドラマ『孤独のグルメ』や、酒飲みたちのバイブルである『吉田類の酒場放浪記』において、御徒町周辺は幾度となく名シーンの舞台となってきた。酒場詩人・吉田類が杯を傾けた老舗の大衆酒場には、創業から継ぎ足されてきたタレの深いコクが息づいている。
厚さ数センチを誇る極厚のハムカツ、黄金色に澄んだ出汁で煮込まれたおでん、そして大衆魚を職人技で昇華させた〆鯖。どれも奇をてらった料理ではない。だが、一口食べれば長年愛され続けてきた理由が瞬時に理解できる。映像作品を通じて全国に知れ渡った名物料理の数々は、今も色褪せることなく訪れる人々の舌を喜ばせている。
メディアが切り取った風情を追体験しながら、自分だけのお気に入りの逸品を見つけ出す作業は、この街ならではの知的で贅沢な遊興と言えるだろう。