自己責任論が叫ばれる一方で、組織への滅私奉公が報われなくなった現代。若者世代が抱く閉塞感はかつてないほど高い。誰かに守られることを期待せず、自分の力とリスクテイクだけで自分の居場所を勝ち取ろうとする元子の姿は、現代の若者にとって一種のカリスマ的ヒーローとして映る。
彼女は哀れみを乞わない。被害者ぶることもしない。横領という一線を越えた自覚を持ち、その報いを受ける覚悟すら腹に括っている。「誰も信じない、信じるのは手帖と自分だけ」という孤独な哲学は、優しさに包まれた表面的な人間関係に疲弊した現代人の心に、冷たくも強烈な刺激を与える。