数々の名作でアカデミー賞音響賞を受賞してきた伝説的音響エンジニアのゲイリー・ライドストロムは、日常的な音こそ最も高度なデザインが求められると指摘する。本物のドアをそのまま録音した音だけでは、映画が求めるドラマチックな演出効果に耐えられないことが多いからだ。
ライドストロムをはじめとするトップクリエイターたちは、木製家具の軋み、金属パイプの摩擦音、さらには動物の声の低周波数帯域までを幾重にもレイヤリングする。視聴者の無意識に直接訴えかけるドアの開閉音を作るため、周波数特性をミリ単位で調整し、作品独自の緊迫感を構築しているのだ。