テレビドラマ『探偵物語』で見せた工藤俊作の軽妙な語り口とベスパを駆るスタイリッシュな佇まいは、当時の若者文化を鮮烈に決定づけた。軽やかなユーモアの裏側にふと覗く冷ややかなニヒリズム。あの絶妙なアプローチこそが、日本におけるハードボイルド像を根本から書き換えたと言えるだろう。
だが、彼は同じイメージにとどまることを激しく拒絶した。映画『野獣死すべし』で見せた凄惨なまでの役作りは、当時の映画関係者を言葉失わせるほどだった。奥歯を4本抜き、極限の減量によって頬をこけさせ、眸の奥に冷酷な虚無を宿した伊達邦彦像。画面の向こう側から放たれる異様な緊張感は、観客の息の根を止めるほどの迫力を宿していた。