元号の決定プロセスは、近代以降もっとも厳重な情報管理が敷かれる国家機密の領域である。2019年の令和改元において、内閣官房が主導した極秘オペレーションの全容は、近年になってようやく詳細な検証が進みつつある。
当時、官房長官として新元号を発表した菅義偉をはじめとする中枢メンバーは、情報の漏洩を極限まで警戒していた。選定の過程で有識者会議に提示された最終原案は6つ。「令和」のほかに「英樹(えいき)」「万和(ばんな)」「万保(ばんぽう)」「広五(こうご)」「久化(きゅうか)」が存在していたことは広く知られているが、学術界ではさらに初期段階で除外された多数の候補文字群の精査が続いている。
最大の転換点は、古典の出典を従来の中国古典(漢籍)から国書へとシフトさせた点にあった。万葉集巻五の「梅花の歌三十二首」序文から抽出された「令和」の考案者として有力視される国文学者の中西進は、平和への希求と日本文化の美意識を巧みに融合させた。宮内庁との緊密な連携と政治的リーダーシップの綱引きの末、1300年にわたる漢籍準拠の慣例を破る歴史的決断が下された瞬間だった。