原敬が確立した統治手法は、現代の民主主義社会におけるリーダーシップ論にも直結する鋭い問いを投げかける。原は理想主義的な普通選挙の即時導入を拒み、まずは鉄道網の整備や教育機関の拡充といった地方への利益誘導を通じて党基盤を固めた。
「まず政権を握り、実体を作らねば理想は絵空事に終わる」。この冷酷な実利主義は、政敵からは「金権腐敗の元凶」と激しく糾弾された。しかし、確固たる基盤のない理想がいかに脆く崩れ去るかを、原は誰よりも知悉していた。数を頼みとし、妥協を恐れず、権力を最大限に活用して制度を定着させる。そのプラグマティズムは、分断とポピュリズムに揺れる現代の統治機構に対する強烈なアンチテーゼとなっている。