手渡す。たったそれだけのことだ。しかし、この一連の動作が持つ法的な重みは極めて大きい。だからこそ、手交を行う際には「確かに渡した」「確かに受け取った」という事実を客観的に証明できる状態を作らなければならない。
実務で最も陥りがちな失敗は、口頭で手渡して終わらせてしまうことだ。後から「そんな書類はもらっていない」「中身が違っていた」と主張された場合、渡した側の立証はきわめて困難になる。これを防ぐための鉄則が「受領書(受領印・署名)」の取得だ。文書を手渡すのと引き換えに、日付、受領者のフルネーム、自筆サインまたは押印を求めた受領書を回収する。この一連の手順が完了して初めて、法的に安全な手交が成立する。
万が一、相手方が受領を拒否した場合はどうすべきか。その場で強引に押し付ければ無用なトラブルを生む。実務上は、受領拒否の経緯を詳細に記録した顛末書を作成し、同席した立会人の署名を得た上で、速やかに内容証明郵便などの追跡可能な郵送手段に切り替える判断が必要となる。