日本におけるこの系譜を語る上で、なばたとしたかが世に放った『こびとづかん』の功績は外せない。昆虫のような生態と中年男性のような風貌を融合させたあの衝撃作は、子どもから大人までを巻き込み、「気持ち悪いのに目が離せない」という新たな美意識を日本中に定着させた。
そして現在、その狂気と愛らしさのバランスを極限まで研ぎ澄ませたのが、イラストレーターのナガノが手掛ける『ちいかわ』だ。一見すると愛くるしい小動物たちの日常を描きながら、その背後には過酷な労働環境や不条理な怪異が容赦なく口を開けている。キュートな表層とディストピア的な深層の落差。この猛毒を孕んだ構造が、読者の感情を激しく揺さぶり、社会現象へと昇華させた。